相続税とはどんな税金? 相続税がかかるかかからないかの基準や判断方法は? 相続税法やその税金の計算の仕組みは? 家族構成に応じて具体的にどれくらいの相続税がかかるのか? 相続税申告をする際にはどのような段取りで進めていけばよいのか? 今回はこのようなことなどについて考えていきたいと思います。

相続税とは

相続税は一定以上の財産を保有している人が亡くなった時に、その財産(遺産)を相続して受け継ぐ人が納めなければならない税金のことです。
ただし遺産に対してかかる税額は固定されているわけではなく、さまざまな条件が考慮されて変動するものですので、節税対策をいかに上手くできるかどうかによって相続税額が大きく変わってくるのです。

相続税がかかるかかからないかの基準

相続税には基礎控除といって相続税額を計算するにあたって必ず控除してもらえる金額が設定されていて、その金額を超えない限り相続税が発生することはないのです。

相続税の基礎控除とは

相続税の基礎控除とは、課税対象となる財産額の一部を非課税枠とする制度のことです。
相続税というものはそもそも課税対象となる財産の額が基礎控除を超える場合に課税される税金でありますので、課税対象となる財産の額が基礎控除の範囲内である場合には、相続税は一切かかりません。
この相続税の基礎控除については、平成27年1月1日からその金額が引き下げられ、それまでの6割となって、相続税が課税される範囲が拡大されました。
これまで相続税というものは富裕層だけの問題であると考えられがちでありましたが、これからは一般家庭にも関わってくる問題へと変わってきているのです。

相続税は財産を相続したすべての人に課税されるのではなく、課税対象となる財産の額が基礎控除を超える場合にだけ課税されるのですが、現在基礎控除の額は最低額が3,000万円です。
したがって相続財産が3,000万円以下であれば、法定相続人の人数等にかかわらず相続税の申告・納税をする必要はありません。
現在相続税の基礎控除の額は次の通りです。

3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

この場合の「法定相続人」については、相続放棄をした者があっても相続放棄がないものとしてその人数をカウントします。また相続人のなかに養子が含まれている場合には、「法定相続人」の人数に含める養子の数については、次の通り制限されています。

  • 被相続人に実子がある場合は 1人
  • 被相続人に実子がない場合は 2人

法定相続人について

遺産を誰が相続するかについては、遺言がある場合と遺言がない場合とでは大きく異なります。

遺言がある場合

遺産は原則として遺言で指定された人が指定された通りに相続します。この場合には。遺産の内容にもよりますが、原則として相続人や受遺者の間で遺産分割協議をする必要はありません。

遺言がない場合あるいは遺言が法的に有効なものでない場合

民法の規定により、相続人になることができる人の範囲と順位が決まります。この民法の規定によって相続人になることができる人のことを「法定相続人」と言います。
法定相続人が相続する場合においては、法定相続人の間の遺産分割協議によって遺産が分割されることになります。
民法の規定により法定相続人になることができる人は、配偶者(法律上の夫または妻 内縁の夫または妻は含まれません)、子(直系卑属)、父母(直系尊属)兄弟姉妹(傍系血族)の4種類の立場の人です。内縁の夫または妻はもちろん、たとえ親族であっても長男の嫁やおじ・おばなどは相続人となることはできません。
もしこれらの人に遺産を残したいのであれば、これらの者を受遺者として遺言書を作成しておく必要があります。

法定相続人の順位と範囲

配偶者はつねに法定相続人となります。すなわち被相続人に第一順位(子や孫などの直系卑属)、第二順位(父母や祖父母などの直系尊属)、第三順位(兄弟姉妹またはその子)がいる場合には、その親族と共に法定相続人となり、上記の親族がいない場合には単独で法定相続人となります

①配偶者と子が法定相続人の場合=配偶者2分の1、子2分の1

被相続人に子がある場合には子が第一順位の法定相続人となります。子が被相続人より先に死亡している場合には、子の子や孫(直系卑属)が代襲相続人となります。子には胎児、養子、非嫡出子も含まれます。
ただし胎児が死産した場合にははじめからいなかったものとされ、非嫡出子の場合には父親の相続については、認知を受けなければ法定相続人になることができません。また養子が普通養子の場合には養親のみならず実親の双方を相続することができるのですが、特別養子の場合には養親しか相続することができません。
なお「自己の孫(亡き長女の嫡出子)を養子にしていた者が死亡し相続が開始した場合には、右の者の孫は、被相続人の養子としての相続権を有すると同時に亡き母の代襲相続人でもあるから、養子としての相続分と代襲相続人としての相続分を有する」(昭和26年9月18日民事甲1881号民事局長電報回答)とされています。

②配偶者と第二順位の法定相続人(父母・直系尊属)=配偶者3分の2 直系尊属3分の1

被相続人に直系卑属(子や孫など)がいない、あるいはその全員が相続放棄している場合には、被相続人の直系尊属(父母・祖父母)が第二順位の法定相続人になります。親等の違う直系尊属の間では「親等の近い者」が相続人となり、それ以外の直系尊属は相続人にはなりません。

  • イ、父母と祖父母・・・・・父母のみが相続人になります。
  • ロ。父と母方の祖父母・・・・父のみが相続人になります。
  • ハ、父方の祖母と母方の祖父・・・・同順位で相続人になります。

③配偶者と第三順位の法定相続人(兄弟姉妹・甥姪まで)

被相続人に直系卑属や直系尊属がいないあるいはそれらの者全員が相続放棄をしている場合には、被相続人の兄弟姉妹が第三順位の法定相続人になります。被相続人の兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合には、被相続人の兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪まで)が代襲相続人となります。※

※昭和56年1月1日以降の相続では兄弟姉妹の孫は代襲相続人となりません。
※昭和55年12月31日以前の相続では、被相続人の兄弟姉妹について再代襲相続が認められますので注意が必要です。
※父母を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)、父母の一方を同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)とも相続人になります。ただし相続分については、半血兄弟姉妹は全血兄弟姉妹の半分になります。

このように配偶者は常に法定相続人になります。直系尊属と兄弟姉妹は上の順位の法定相続人がいないあるいはその全員が相続放棄をしている場合に限って法定相続人になります。
ただし子が死亡している場合には、子の直系卑属(子や孫など)が、兄弟姉妹が死亡している場合には、兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪まで)がそれぞれの相続権を引き継いで相続人になります。このことを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と言います。 なお、子が死亡している場合には、孫・曾孫というように直系卑属のラインで何代まででもさかのぼって代襲相続することができます。
一方兄弟姉妹が死亡している場合には、兄弟姉妹の子つまり被相続人から見れば甥姪までしか代襲相続することができません。ちなみに直系尊属には代襲相続という制度はなく、父母が死亡している場合には、直系尊属のなかで「親等の近い者」が法定相続人になります。

相続税の改正について

平成27年1月1日以降の相続について相続税の大改正が行われました。

⑴基礎控除の改正

基礎控除の額が次の通り60%に減額されました。これによって基礎控除の額が大きく減額されるため相続税が課税される人の割合が高くなると言われています。

改正前=5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
改正後=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

たとえば父親が死亡して母親と子供1人の法定相続人がおり、遺産として不動産3,000万円と預貯金2,000万円で、遺産総額が5,000万円であった場合において、改正前の基礎控除額で計算すると、
基礎控除の金額 5,000万円+1,000万円×2=7,000万円 となりますので、
遺産総額5,000万円 < 基礎控除5,000万円 で相続税はかからないのですが、
改正後の基礎控除額で計算すると、基礎控除の金額 3,000万円+600万円×2=4,200万円となり、
遺産総額5,000万円 > 基礎控除4,200万円 で遺産総額が基礎控除を上回るため相続税が発生することになります

相続税律の改正

下表の通り相続税率区分が6段階から8段階に変更されて、2億円超から3億円以下の部分は40%から45%に引き上げ、6億円超の部分は50%から55%に変更されています。

相続税の税額控除の改正

①未成年者控除の改正

改正前は20歳までの1年について6万円であったのが、改正後は20歳までの1年について10万円に増額されています。
たとえば相続人が16歳である場合の未成年者控除につき改正前では20歳-16歳=4歳 6万円×4歳=24万円であったのが、改正後では10万円×4歳=40万円の未成年者控除となります。

②障害者控除の改正

改正前は85歳までの1年について6万円(特別障害者12万円)であったのが、改正後は85歳までの1年について10万円(特別障害者20万円)に増額されています。
たとえば相続人が35歳の障害者である場合、改正前では 85歳-35歳=50歳 6万円×50歳=300万円であったのが、改正後では 10万円×50歳=500万円の障害者控除となります。

⑷小規模宅地の特例の改正

相続によって課せられた税金により住居を失うといったことが起こらないように、住宅地に関する特例が用意されています。
①小規模宅地の特例とは被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用または居住用に使用していた土地で要件を満たす場合は限度面積までの部分について、評価額を50%~80%減額することができるのですが、平成27年の改正によって評価の減額が行われる限度面積や適用面積が拡大されています。
②居住用宅地等(特定居住用宅地等)の限度面積の拡大
改正前 限度面積240㎡(減額割合80%)⇒ 改正後 限度面積330㎡(減額割合80%)
③居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積の拡大
改正前は特定居住用宅地等240㎡ 特定事業用宅地等400㎡。合計400㎡であったのが、改正後は特定居住用宅地等が330㎡に拡大されて、合計適用面積も730㎡となり、それぞれの限度面積まで完全に適用できるように改正されています。
ただし貸付事業用宅地等についての特例適用を受けない場合に限られています。

相続税の計算方法

⑴遺産総額を算出する

①遺産総額の計算式

遺産総額(課税価格)=(プラスの財産-非課税の財産)-(マイナスの財産+葬儀費用)+相続開始前3年以内に贈与された財産

  • 「プラスの財産」には相続財産そのもの以外の「みなし相続財産」が含まれます。
  • ロ、死亡保険金・死亡退職金は「500万円×法定相続人の数」非課税となります。これは遺族の生活を保障する趣旨で設けられた非課税枠です。
  • ハ、相続開始前3年以内に贈与した財産の額を含めることに注意が必要です。これは、例えば死の間際に多額の生命保険を掛けて相続税を逃れようとすることを防止する趣旨です。

②具体例 法定相続人が配偶者と子2人の場合 遺産総額(課税価格)は合計2億円

プラスの財産

ⅰ、現金・預金 3,000万円
ⅱ、土地 8,000万円
ⅲ、建物 4,000万円
ⅳ株式 6,500万円

みなし相続財産

生命保険金 1,500万円

非課税の財産

生命保険金 1,500万円

マイナスの財産

借入金 1,000万円

葬儀費用

500万円

→合計20,000万円

⑵基礎控除額を差し引いて課税対象となる額を確定する

具体例:法定相続人が配偶者と子/2人の場合の基礎控除の額は 3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。

⑶各法定相続人に基づく相続税額を算出し、合計する。

基礎控除後に残っている金額を、法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定して、各人の法定相続分の額に相続税率を掛けて「控除額」を差し引いて相続税額を計算し、それを合計して「相続税の総額」を算出します。

具体例
たとえば課税価格の合計額が2億円、法定相続人が配偶者と子2人の場合の相続税の総額は次の通りです。

2億円(課税価格)-(3,000万円+600万円×3人)(=基礎控除額)=1億5,200万円(課税遺産相談)となります。
配偶者(法定相続分1/2);1億5,200万円×1/2×30%(税率)-700万円(控除額)=1,580万円となります。
子2人(法定相続分1/4ずつ):1億5,200万円×20%-200万円(控除額)=560万円となります。
この結果相続税の総額は次の通りです。
1,580万円(配偶者)+560万円×2(子2人)2,700万円

⑷配偶者と子2人のそれぞれの最終的な相続税の額を算出する

この2,700万円を実際に相続した遺産の割合で割当し直します。
たとえば遺言に従って遺産分割がなされた結果、配偶者:子①:子②=4::3:3となった場合
相続税総額2,700万円を各人の相続割合に従って割り当てると次のようになります。
配偶者:子①:子②=1,080万円:810万円;8 10万円

⑸各人ごとの事情に応じて増額・減額して最終的な相続税の額を確定する

税額の軽減 税額控除

ⅰ、配偶者は法定相続分or1億6,000万円のいずれか大きい額まで非課税です。
ⅱ、法定相続人が未成年者or障害者の場合は特別の控除が認められます。
ⅲ、被相続人が相続開始前10年以内に財産を相続により取得している場合は税負担が軽減されます。

税額の加算

相続人が被相続人の1親等の血族、配偶者以外の場合は税額が20%加算されます。
これらの計算まで済ませて、ようやく各法定相続人の額が決まります。

相続税申告の手順

相続税の申告と納税は、相続開始を知った日の翌日から10カ月にしなければなりません。

遺産総額集計

①土地・建物(不動産)は路線価で、預貯金はそのままの額で、株式株価も含めて計算します。被相続人の債務・葬儀費用を差し引いた額が遺産総額になります。

②基礎控除額の算出 イ、法定相続人の人数の確定
被相続人の出生~死亡のすべての戸籍謄本を取り寄せて家族・親等のうちから法定相続人に該当する人をリストアップします。養子も法定相続人になります。
ロ、3,000万円+600万円×法定相続人の人数の式から基礎控除の額を計算します。

③相続税がかかる額の算出
遺産総額と基礎控除額が確定したら、遺産総額から基礎控除額を引き、相続税がかかる遺産額を計算します。このときに遺産総額<基礎控除額となれば相続税はかからず、相続税の申告をする必要もありません。
遺産総額>基礎控除額となる場合には相続税がかかりますので、申告をする準備を進める必要があります。
なお相続税の申告書の提出先は、「被相続人が死亡時に所在していた地域の税務署長」になります。