相続税の申告はどのようにするのだろうか? 相続税の申告が必要となる場合と不要となる場合とはどのような基準によって判断するのだろうか? 相続税の申告が必要なのはどのような場合なのだろうか? 相続税の申告が必要な場合に申告しないでいたらどうなるのだろうか? 今回はこのようなことなどについて考えていきたいと思います。

相続税とは

相続税は被相続人の死亡により、相続人がその相続で取得する財産に対して課税される税金のことです。相続税は、遺言によって取得した財産についても課税されるため、財産の受遺者も対象となります。
なお平成27年の相続税法の改正により基礎控除額が3,000万円+600万円×法定相続人の人数となりました。
したがって課税対象となる遺産総額がこの額に達しなければ相続税はかかりません。
ちなみに平成26年12月31日までに死亡していた場合には、5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数の算式により基礎控除額が計算されます。

相続税の申告・納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長にしなければなりません。
通常相続税の申告には相続手続き・財産の調査・評価などに最低でも4~6ヶ月はかかりますので早めに準備を進めることが必要です。
相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月の相続税の申告期限を過ぎてしまうと、相続税の控除に関する優遇措置を受けることができなくなるのみならず、本来支払うべき相続税の額以外に加算税や延滞税などがかかりますので、早めに申告する必要があります。

相続税の申告が必要な理由について

⑴相続税法27条1項は、「相続税の申告書を提出しなければならない者は、相続または遺贈によって財産を取得した者で、その取得した財産について納付すべき相続税額があるもの」と規定しています。
簡単に言えば相続税の基礎控除額を上回る財産を相続人は相続税の申告書を提出する義務があるということです。この提出義務には基礎控除以外の特例や控除を受けることでゼロになる場合が含まれるので注意が必要です。

⑵財産の評価額については、国税庁が定める「財産評価基本通達」によって、資産ごとに評価することになります。
たとえば不動産のうち、土地については路線価や土地の固定資産税評価額を基準として算出します。
家屋については固定資産税評価額そのものになります。また相続に伴って受ける生命保険の死亡保険金は本来相続人を受取人とするものは、民法上その相続人の固有財産となり相続財産ではないのですが、相続税法では“みなし相続財産”とされて、受取った死亡保険金のなかから、500万円×法定相続人の人数の金額を控除した残額が相続税の課税対象となります。

  ⑶平成27年1月1日以後に開始する相続においては、3,000万円+600万円×法定相続人の人数の算式で基礎控除額を算出し、実際の相続により取得した財産がこの基礎控除額を下回る場合には、相続税の申告書の提出は不要となり、納税する必要もありません。

⑷相続により取得した財産が基礎控除額を超える場合でも、必ず相続税が発生するわけではありません。
相続税の計算にあたってはいくつかの特例があり、具体的には「小規模宅地等の評価減の特例」「一定の面積までの宅地の評価額が低くなる特例」や「配偶者に対する税額軽減措置(配偶者の法定相続分相当額または1億6,000万円のいずれか多い方の金額を上限に、配偶者が相続によって取得した財産にかかる相続税額が軽減されます。)等の特例があるのですが、これらの軽減措置や特例が適用されるためには、相続税の申告書を提出することが条件になっていて、相続税の申告書を提出した上で初めて相続税を納めなくてもよくなる場合があるからです。

相続税の申告の仕方

⑴相続税は相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に申告しなければなりません。
この申告期限までに申告するのを怠ると、さまざまな追徴課税が行われます。しかしながら、遺産が多岐にわたっていたり、財産の評価方法が複雑であったり、はたまた遺産分割協議が長引いたりと、相続税の申告期限までに申告することができないことがあります。
そのような場合には、税務署にその事情を説明した上で、相続税の申告期限までに、法定相続分に基づいてとりあえずいったん相続税の申告をしておいて、問題が解決次第、訂正した相続税の申告を改めて行います。

⑵相続税の申告は税務署所定の申告用紙に必要事項を記入し必要書類を添付して行います。

  • ①相続税の申告書
  • ②被相続人の略歴書
  • ③遺産分割協議書(遺言書)の写し
  • ④相続人全員の印鑑証明書
  • ⑤生命保険金等支払通知書の写し
  • ⑥被相続人・相続人全員の戸籍謄本
  • ⑦土地・株式の評価計算書

  • ⑧固定資産税評価証明書
  • ⑨預金などの残高証明書

相続税の申告は被相続人の最後の住所地を管轄する税務署長に対して行います。

⑶物納について 相続によって取得した財産が換金しにくいものであったり、経済的な事情などから金銭で納めることができない場合には、納付を困難とする金額を限度として、相続税を財産の現物で納める物納制度があります。ただし次のような条件があります。

  • ①延納によっても金銭で納付することが困難な事情があること
  • ②物納することができる財産があること
  • ③納期限までに物納申請書を管轄税務署長に提出すること
  • ④管轄税務署長の許可を得ること

なお物納に必要な書類は次の通りです。

  • ①物納申請書
  • ②物納財産目録

相続税の申告が不要な場合はあるのか?

⑴まず被相続人の残した遺産総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を超える場合には相続税の申告義務があり、超えない場合には相続税の申告業務がありません。
なお小規模宅地の特例や配偶者控除の特例などを使って相続税額がゼロになる場合であっても相続税の申告は必要です。これらの特例使わなくても相続によって取得した財産の総額が基礎控除額に達しない場合および未成年者控除や障害者控除を使って相続税額がゼロになる場合には相続税の申告は不要になるのです。

⑵相続税法基本通達27-1によれば、「相続税の申告書を提出しなければならない者は、相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む)によって財産を取得した者で、その取得した財産につき法第19条第1項並びに措置法第69条の4第1項、第69条の5第1項、第70条第1項、第3項、及び第10項の規定の適用がないものとして計算した場合において納付すべき相続税額があるものに限られるのであるから留意する。」とされています。
すなわち配偶者控除や小規模宅地の特例、特定計画山林の特例、寄付控除などを使って相続税額がゼロになる場合には、相続税の申告をする必要があるということになります。

相続税の申告をしないとどうなるか(リスク)

⑴相続税の課税対象となる人が相続税の申告をしないで放っておくと、相続が開始してから2年ほどして忘れたころに税務署が税務調査をするためにやってきます。

⑵小規模宅地の特例を使うと土地の評価が最大で80%下げることができます。たとえば1億円の宅地の評価が2,000万円に割引されることもありうるのですが、相続税の申告をしていなければ相続税がかからないことも可能であったにもかかわらず、放置していたがために何百万円、何千万円と損失が出てしまうこともあるところがリスキーなところです。
小規模宅地の特例にはさまざまな要件があるのですが、このことを知らずに遺産分割や売却をしてしまうと、この小規模宅地の特例が使うことができなくなる可能性がありますので注意が必要です。

⑶被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者が相続によって取得した財産について配偶者の法定相続分または1億6,000万円までなら相続税がかからないのですが、その配偶者が死亡してその相続(二次相続)が開始した場合、最初の相続では相続税がかからなかったとしても二次相続では逆にかなりの相続税かかってくるのです。
一次相続、二次相続も考慮に入れたうえで制度を組み合わせて最も損をしないプランを考える必要があります。
この配偶者控除の適用を受けるためには相続税の申告をしておかなければなりません。

⑷無申告加算税
無申告加算税とは、特別の理由もなく相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月の相続税の申告期限までに相続税の申告をしないときに課される税金のことです。
申告期限までに相続税の申告をしないで、税務署の税務調査によって期限後に相続税の申告をした場合には、通常の納税額に対して15~20%の税率で無申告加算税が課税されます。たとえば1,000万円の相続税を納めるべき人が相続税の申告をしなかった場合には、通常支払うべき相続税額より200万円も多く支払わなければいけなくなくなるということです。
ただし相続税の申告期限までに申告をしなかったが、税務署の税務調査が行われる前に自主的に相続税の申告をした場合には、納税額に対して5%の無申告加算税のみが課税されます。
たとえば1,000万円の相続税額を納めるべき人が相続税の申告をしなかったけれども税務署の税務調査が入る前に自主的に相続税の申告をした場合には、1,050万円の相続税額を支払うことになります。つまり本来納めるべき相続税額より50万円多く支払わなければいけないことになるのです。

⑸過少申告加算税
①過少申告加算税とは、相続税の申告期限内に提出された相続税の申告書に記載された金額が本来納付すべき相続税額よりも少なかった場合に課税される税金のことです。ただし、正当な理由がある場合や更正を予知せずに修正申告をした場合には、過少申告加算税は加算されません。
②相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出し、その申告書に記載された税額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合、自主的にする修正申告をした場合には、本来納めるべき相続税のみでよく、過少申告加算税は加算されません。
③相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出し、その申告書に記載された税額が、本来納めるべき相続税額よりも少なかった場合、税務書から指摘されて修正申告をした場合には、本来納めるべき相続税額に対して10%の税率で過少申告加算税が課税されません。
④相続税の申告をしたときの相続税額と50万円で、どちらか大きい金額でその金額を超える部分については15%の税率で過少申告加算税が課税されます

⑹重加算税
①重加算税とは、相続税額を減らすために相続財産を隠匿したり仮装したりした場合においては、増加の本税に対して35~40%の税率で課される税金のことです。
②相続税の申告書を提出した場合において、相続財産を隠匿したり、事情を仮装したりしていた場合では、35%の税率で重加算税が課税されます。
③相続税の申告書を提出しないで、相続財産を隠匿したり、事実を仮装したりしていた場合では、40%の税率で重加算税が課税されます。

⑺延滞税

①相続税が期限までに納付されない場合においては、相続税の申告をしなければならない期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて、延滞税が課税されることになります。

②納付期限の翌日から2カ月を経過するまでに納付した場合においては、原則として年7,3%の税率で重加算税が課税されます。ただし、前年の11月30日の公定歩合+48%のほうが低い場合においては、その割合の重加算税が課税されることになります。

  • イ、平成22年1月1日から平成23年12月31日までの期間は  年4.3%
  • ロ、平成21年1月1日から平成21年12月31日までの期間は  年4.5%
  • ハ、平成20年1月1日から平成20年12月31日までの期間は  年4.7%
  • ニ、平成19年1月1日から平成19年12月31日までの期間は  年4.4%
  • ホ、平成14年1月1日から平成18年12月31日までの期間は  年4.1%

③2カ月を経過した後の期間については、年14.6%の税率で重加算税が課税されます。
なお期限までに納付しなかった場合であっても延滞税が課税されない場合が例外的にあります。それは次のようにケースになります。

  • イ、税務署員の誤指導による場合
  • ロ、相続税の申告書を提出した後の法令解釈の明確化等による場合
  • ハ、相続税の申告期限時の課税標準等の計算不能による場合

相続税の相談は誰にすればよいのか?

⑴相続税について自分だけでは解決することができないケースはさまざまなものがありますが、主な問題としては次のようなものが考えられます。

  • ①相続税の申告の方法がわからない。
  • ②相続税の納税額が多いので少しでも節税する方法を知りたい。
  • ③相続財産の分割について相続人の間でトラブルになっています。
  • ④相続する不動産の名義変更の手続きを自分ではすることができない。

⑵税理士への相談:節税対策などを含めた総合的な問題について
税理士とは税務に関する専門家(国家資格)であって、主な仕事としては企業や個人事業主の会計処理を代行して税務書類の作成を行うほか、節税対策などの税務相談に応じてくれます。
したがって自分だけでは相続税の申告をするのが難しい状況のほか節税対策や手続きの代行など。自分の負担を極力減らして相続税の申告をすべて任せたい場合は税理士に相談するのが最適です。
相談した財産の価額に応じて税理士報酬を支払う必要があります。

⑶税務署への相談:相続税の申告手続きなど基本的な内容について
相続税の申告先は基本的に被相続人の最後の住所地を管轄する税務署長になりますが。税務署の職員に聞けば一般的な相続税の申告手続きの手順や書類の書き方などについて教えてくれます。税務署への相談は無料で職員が対応してくれるので事務的な内容で困っているのであれば、手っ取り早く税務署に問い合わせてみるのが良いかもしれません。
ただし不動産がからむような複雑なケースや個別具体的なケースまでは教えてくれませんので、その場合にはやはり税理士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

⑷弁護士への相談:相続人同士の間でトラブルが発生した場合など
相続税に関連する問題として、遺産分割のトラブルがあります。
遺産分割を決める基準としては被相続人の残した遺言書のほか民法に規定する法定相続分をもとに各相続人への分配割合を決めるのですが、多額の遺産相続においては、相続人同士が争って遺産分割協議が進まないで、相続税の申告にも支障をきたすことがあります。
したがって遺産分割協議の代理交渉について弁護士に相談することも考えられますが、遺産の額にもよりますが、着手金と報酬金の合計で100万円になることもあります。

⑸司法書士への相談:相続登記手続き依頼など
土地や建物など不動産に関する相談については遺産分割が確定した後、不動産の名義変更をする必要があります。被相続人から相続人に名義変更するとことを相続登記と言います。
相続登記にはいつまでにしなければならないという申請期限は定められていませんが、相続登記の手続きをしなければ不動産の売却ができないなどの不都合が発生するため、早いうちに手続きをしておくべきです。
相続登記は相続人が自分ですることもできますが、必要書類を集めて申請書を作成して不動産の所在地管轄する法務局等に申請するのには手間と時間がかかりますので、司法書士に申請代理を依頼することが考えられます。司法書士に依頼する場合には、登録免許税のほかに不動産の評価額にもよりますが、5万円~10万円の司法書士報酬が必要になります。