遺言書の種類とそれぞれの作成方法について知りたい、なぜ遺言書を書くのがよいのか、自分が遺言書を書くべきなのかどうかがわからない、遺言書の作成をどの専門家に依頼するのがよいのかがわからない、自分で遺言書を書くときに無効にならないようにするためにはどのような点に注意しなければならないのかを知りたい・・・・。今回はこのようなことについて知りたいという方々のために、さまざまな知識やノウハウをご紹介していきたいと思います。

遺言書とは

⑴遺言書とは

⑴遺言書とは、被相続人が死亡する前に自分の財産を処分する方法を記したものとして、基本的には遺産相続をする者や遺産の分配方法を自由に定めることができる、遺産相続において非常に強い効力を有する書類のことです。

遺言書は遺産相続の場合においては欠かすことができない重要なものです。
遺言書があるのとないのとでは遺産分割の進め方について大きな差が出てきます。
遺産相続の問題は親族間でもめる大きな要因となることが多く、たとえ親しい親族の間であっても問題がこじれると不愉快なトラブルに発展していく可能性が多分にあります。
遺言書は被相続人によって、自分だけで遺産相続の方法を決定することができますので、このような遺産相続をめぐるトラブルを回避する方法として非常に有効です。

故人が望むのは、遺族が遺産相続を円滑に進めていくことができるように、遺産に関する指示を残した最後の意思表示であって、遺産分割方法の指示、相続人同士のトラブル回避、自分の遺産を自由に扱う旨などを明記できるのです。

ただし遺言書はその強力な効力があることで、遺言でできることとできないことがあって、また民法960条に「法律の定める方式に従わなければ効力を有しない」旨規定されており、書き方に関するルールを遵守しなければ遺言書として無効になる場合がありますので注意が必要です。

⑵遺言書の種類

遺言書には普通方式の遺言書と特別方式の遺言書があります。

ⅰ.普通方式の遺言書

①自筆証書遺言

遺言者が書面に必ず自筆で作成します。パソコンやワ-プロで作成しても無効になります。必要事項は「遺言書の作成年月日」「遺言者の氏名」「遺言の内容」です。そして自身の印鑑を押印します。必ずしも実印である必要はありません。

②公正証書遺言

遺言者が法定の手続きにしたがって公証人に対して自らの遺言内容を伝え、公証人はこれを落とし込んで遺言書を作成します。いくつかの手順を踏んで作成します。さらに公証人が遺言書を保管するために効力の確実性という点でより優れた方法で、遺言書の故意または過失による虚偽記載、書換え消去や混同を防止することができ、作成責任が明確になることで、後々問題となることがないというメリットがあります。

③秘密証書遺言

遺言者が遺言内容に署名押印(必ずしも実印である必要はありません。)して封筒に入れて封印したものと同じ印章をしたうえで封じ、公証人に提示して所定の処理をしてもらう方法です。この場合は全文が自署である必要はありません。

ⅱ.特別方式の遺言書

    1. 一般危急時遺言
    2. 難船危急時遺言
    3. 一般隔絶地遺言
    4. 船舶隔絶地遺言

    なおこれらの特別方式の遺言書は、遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになった時から6か月間生存している場合は効力が生じません。

    遺言書を書くメリット

    ⑴遺言書を書く目的(一般的な例)

    ①遺族間の紛争防止

    遺言書がない場合、遺産をどのように分けるかについては相続人同士が話し合って決めていく必要はあります。たとえば3人の子が相続人であるとすれば、民法の法定相続分では3人が平等に3等分すると規定されているのですが、これは一応の基準を規定したものであって、話し合いでこの割合(法定相続分)を変更することができます。

    3等分するというと一見平等であるように思われますが、たとえばそのうちの1人が死亡した親の介護をしていたというような事情があったとすれば、そのような事情を考慮しないで3等分したのでは実質的に平等であるとは言えないので、親の介護をしてきた子は納得しない可能性も十分に考えられます。

    また相続財産のほとんど家と敷地であるような場合、きれいに3等分するのは事実上不可能であると言っても過言ではなく、話し合いがもつれることは想像に難くありません。そこで遺言書によって、諸々の事情を配慮した遺産の分け方を指定しておくことで、遺族間の無用の争いを回避することができるのです。

    ②財産を渡したい人に確実に渡るようにする

    遺言書を作成しなければ、遺産は法定相続人が法律上当然に相続することになります。したがってたとえば内縁の妻や夫、愛人、福祉団体など法定相続人以外の者に財産の一部を残したい場合あるいは子と兄弟姉妹がいて兄弟姉妹にも遺産の一部を残したい、親族ではないが特にお世話になった人にも遺産の一部を残したいなどいう場合には、その旨を記載された遺言書を作成しておかなければなりません。

    ③相続手続きの負担軽減

    遺言書を作成しない場合、相続開始時に行わなければならない手続きが増えたり複雑になったりして遺族の物理的・精神的な負担が非常に大きくなります。たとえば自分の死後に自分の預金口座から遺族が預金を引き出そうとしたときに、遺言書があれば、ない場合と比べてスムーズに引き出すことができることがあります。
    また遺言書がなければ遺産をどのように分けるかについて相続人同士の話し合いによって決めるしかないため、思いのほか時間と労力がかかり、精神的な負担も大きく神経をすり減らすことになります。その点遺言書で遺産分割の方針が示されていることで話し合いの負担が軽減され、あるいは話し合いそのものをすることなく、遺産相続の手続きに入ることができる場合があり、遺族に非常に助かることになるのです。

    ④相続税対策

    遺言書は相続税対策としても有効な場合があります。遺産を誰がどれぐらいの割合で相続するかについては民法が定めているのですが、遺言書で指定することでそれとは異なる配分することもできます。配分の仕方によっては法律の規定通りに分配する場合と比べて相続税も額を低く抑えることもできることがあります。

    ⑤自分の最後の思いを残す

    遺言書には遺産分割に関する事項のほか「付言事項」として自分の思いを残すことができます。付言事項は家族やお世話になった人への感謝の気持ちや、今後も仲良く暮らしで下さいというような気持ちを書き残すことができます。付言事項には法的効力はありませんが、自分の気持ちを書き残しておくことは遺族同士の円満な関係を維持し、その後の遺産分割協議などで平和的な話し合いを導くための大変効果的な方法であると言えます。

    遺言書を残す際の注意点

    ⑴推定相続人をきちんと把握すること

    「推定相続人」とは、いま自分が死亡した場合に相続人となるべき法定相続人のことです。この判断を誤ってしまうと、せっかく作成した遺言書が台無しになってしまう可能性があります。推定相続人を正確に把握するためには、遺言書の出生までの戸籍を取得して、現在の親族関係を確定させることが必要になります。

    ⑵財産の評価額について棚卸しを定期的に行い、遺言内容を逐次見直すこと

    預貯金であれば額面があるためにさほど問題はないのですが、不動産や株式などの有価証券の場合には、その評価額が時の経過に伴って変動しますので、定期的に棚卸しを行う必要があります。
    なお預貯金の場合は定期預金や出資金に漏れがないように残高証明書を取得し、不動産がある場合には法務局等で「登記事項証明書」を取得してしっかり特定したうえで遺言書に記載します。また評価額のみならず数量も非常に重要で、万が一財産の棚卸しが十分でなく遺言書に記載されてない財産が出てきた場合には、その財産は原則通り法定相続人の共有財産となり、その財産を分割するには法定相続人の全員が参加して遺産分割協議をすることが必要になり、遺言書を作成した意義が半減してしまいます。

    ⑶「遺留分」をできる限り侵害しないように注意する

    遺留分とは、民法の定めにより兄弟姉妹・甥姪を除く法定相続人に認められた、遺産に対する一定割合の権利のことです。遺言者がたとえ「愛人Aに全財産を遺贈する」という遺言書を残したとしても、法定相続人である妻Xは「遺留分」に相当する割合を主張することができるのです。
    ちなみにこの遺留分を侵害する内容の遺言書であっても、遺言書自体は有効なものなのですが、遺留分を侵害された相続人から「遺留分減殺請求」を受けることになるために、相続人または受遺者は逆に経済的にも精神的にも大きな負担を強いられることになってしまいます。このような相続争いに発展させないためにも、遺言書を作成するに際しては「遺留分」についてあらかじめ考慮しておくことが必要になります。

    ⑷遺言執行人を指定する

    遺言執行人とは、遺言の内容を実現するための行為をする権利義務を与えられた人のことで、各種財産の承継手続きを執り行う役割を担っています。たとえ遺言書に指定していなくても事後的に選任することはできるのですが、遺言の内容を速やかに実現するためにも、遺言書で指定するのが望ましいのです。

    ⑸家族のことをしっかりと考え、「最後の想い」を整理して「付言」にする

    気持ちがあいまいなままでは、せっかく遺言書を作成しても無駄になってしまいます。専門家の力を借りながらも、じっくりと時間をかけて「どのように相続してもらいたいのか」について考えをまとめていくべきです。このことをおろそかにしてしまっては、それこそ元も子もありません。
    なお、「付言」にはなぜこのような内容の遺言書を作成したのかなどについて遺言者が自身の文章で説明しておくことで、誤解や解釈をめぐる争いを防ぐ効果を期待することができます。
    また「付言」において解釈への心情に配慮して、大切な家族を失ったことに対する精神的なストレスを緩和し、無用な遺産相続争いへの発展を抑止する効果を期待することもできます。

    自筆証書遺言

    ⑴自筆証書遺言とは

    自筆証書遺言とは、遺言者が作成した遺言書の全文、日付および氏名を自署し、これに押印することによって作成する遺言書のことです。すなわち自筆証書遺言の要件は次の通りです。

      1. 遺言者が自筆で遺言書の全文を作成すること
      2. 遺言者が作成した遺言書に作成した日付と氏名を自署すること
      3. 遺言者が遺言書に押印すること

      自筆証書遺言については、遺言書はすべて自署しなければならません。つまり手書きで作成したものでなければならないということ、ワープロやパソコンによって作成して印字したものでは自筆証書遺言であるとは言えません。
      また、とくに定めがあるわけではありませんが、加筆や修正することができないように、鉛筆やシャープペンシルなどではなく、ボールペン等で作成した方が良いでしょう。
      遺言書には作成した年月日と氏名を自署し、押印することが必要で、三文判や認印では偽造・変造等の恐れがありますので、通常は印鑑登録をしている実印を押印します。

      ⑵自筆証書遺言のメリット

      作成が簡便で、公正証書遺言や秘密証書遺言と異なり、公証役場に出向いて公証人に手続きをしてもらう必要も証人を用意する必要もありません。また費用もかかりません。

      ⑶自筆証書遺言のデメリット

        1. 自筆、つまり手続きをして作成しなければならず、ワープロやパソコンによって作成することはできません。また内容によっては非常に手間と時間がかかります。
        2. 自筆証書遺言は相続開始後に家庭裁判所による「検認手続き」が必要になるために、相続人に手間をかけることになります。
        3. 自筆証書遺言は遺言者が自分で遺言書を保管していることが多く、そのために相続開始後にも遺言書が発見されないまま遺産分割が行われ、遺言者の遺志が相続に反映されないことになる恐れがあります。信頼できる人に預けておくなどの対策を考えましょう。
        4. 自筆証書遺言は、後になって作成時の状況がわからないため、その時点での遺言能力に疑義が生じ、遺言書の有効性が問われ争いになる恐れがあります。とくに認知症等であるような場合には、遺言書の作成時の遺言能力を証明するために、医師の立会いなども考えておく必要があります。

      公正証書遺言

      ⑴公正証書遺言とは

      公正証書遺言は公証人※が遺言書を作成し保管するため安全・確実です。遺言者は署名捺印以外になにも書く必要はなく、公証人が遺言の内容を聴いて。遺言者に代わって遺言書を作成する方法です。
      証書は通常、原本・正本・謄本の合計3通を作成します。原本は公証役場にて原則として20年間(遺言者100歳まで保管する例が多い)保存されて、正本と謄本は遺言者(または遺言執行者)に渡されます。
      また万一紛失しても再交付を請求することができます。

      ※公証人:法務大臣が任命した者で、裁判官、検察官、法務局長、弁護士を永年勤め上げた人のなかから選ばれた公正中立な人のことです。
      しかも国の監督のもとで書類を作成しますので、公正証書遺言は成立について完全な証拠力を有し、「検認」が不要ですから迅速な遺言の執行が期待できます。後日の紛争防止のためにも公正証書遺言が最適であると言えます。

      ⑵公正証書遺言のメリット

        1. 公証人が作成するので、主旨の不明などを理由として無効になる心配がありません。
        2. 原本が公証役場に保管されるため、紛失・変造・相続人による隠匿・破棄の恐れがありません。
        3. 家庭裁判所の検認の必要がありません。
        4. 文字が書けない人でも遺言書を作成することができます。

      ⑶公正証書遺言のデメリット

        1. ①公証人が作成するため、ある程度の費用がかかります。
        2. ②2名以上の証人が必要です。なお未成年者・推定相続人・受遺者およびその配偶者並びに直系血族・公証人の配偶者・4親等内の親族・書記・雇人は証人になることができません。

        ⑷公正証書遺言の作成方法

        公正証書遺言は2人の証人を確保し「遺言書の案文」をあらかじめまとめ、遺言者は遺言内容を2人の証人の立会いのもと明確に公証人に口述します。公証人は筆記したものを遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させます。
        遺言者と証人は筆記の正確であることを確認して署名捺印します。
        遺言者の実印、証人の認印が必要です。公正証書遺言は公証役場に出向いて作成するのですが、やむを得ないときは遺言者の自宅や入院中の病室で作成することができます。

        秘密証書遺言

        ⑴秘密証書遺言とは

        秘密証書遺言とは、公証人がおよび証人2人以上に、遺言の内容を明らかにしないまま遺言者本人が書いたものであることを証明してもらう遺言のことです。
        遺言者が遺言書を作成して署名捺印して封印し、公証人と2人以上の証人に提出して自分の遺言書であることおよび氏名・住所を申述し、公証人がその封書に日付とその申述を記載して公証人・証人が署名捺印します。
        秘密証書遺言はその内容を一切秘密にできるという方式です。
        公正証書遺言と同様に公証役場で公証人や証人が関与しますが、提出されるのはすでに封印された遺言書なので公証人や証人も見ることができず、完全に秘密にされます。
        もし誰かが相続開始後家庭裁判所の検認手続き前に開封してしまえば、その秘密証書遺言は無効になります。
        つまり秘密証書遺言はその内容を遺言者が死亡するまで本当に誰にも知られたくない場合にだけ用いられる特殊な方式で、それほどのメリットもなく、実際にはほとんど利用されていません。

        遺言書の作成を依頼するには

        ⑴弁護士

        法律の専門家である弁護士は遺言書の作成についても最も信頼できる専門家です。また遺言内容や遺産分割などで紛争になった場合にも、当事者の代理人として相手方との交渉もできます。デメリットは「費用が高いこと」です。相続時に遺言に関して争いが予想されその報酬に見合う遺産があるという場合は弁護士です。

        ⑵行政書士

        権利義務に関する書類を代理人として作成ずる専門家でもある行政書士は比較的安い報酬で遺言書の作成を受けてくれます。デメリットは「紛争になった場合に代理人になることができないことです。紛争の心配はなく、費用をなるべく安くしたいという場合は行政書士です。

        ⑶司法書士

        登記手続きの専門家である司法書士に依頼する場合は、相続の対策となる財産に不動産があり、大きな紛争の心配もなく費用はほどほどにしたいというような場合です。

        税理士

        遺言書がある場合の遺産分割協議

        ⑴被相続人が死亡し相続が開始した場合において遺言書があるときは、遺言書の内容に従って遺産を分け、遺言書がないときは相続人全員で遺産分割協議を行い、取得者を決めるのです。このように遺言書の内容が優先されるというのが遺産分割の大原則です。遺言書はあるもののその内容通りにしたくない場合は、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議で取得者を決めることができます。

        ⑵遺言執行者がいる場合には、相続人は遺産に対する管理処分権を喪失し、遺言執行者が管理処分権を有することになりますので各相続人に主導権はありません。また遺言執行者は相続人全員の合意により遺言内容と異なる遺産分割を求められても、あくまでも遺言に基づいて執行をすることができるのです。それが遺言執行者の職務内容であって相続人の意に反する結果になったとしても、相続人に対する任務違背となるものでありません。しかしながら相続人全員が遺言内容と異なる遺産分割を望んでいる場合に、遺言執行者がそれに同意することは可能です。