そもそも相続登記とは何か? どのような理由で相続登記が必要になるのか?相続登記はどのような流れで手続きを進めていけばよいのだろうか? 相続登記をしなければどのような不都合があるのか? 相続登記手続きにはどのような書類が必要になり、どれぐらいの費用がかかるのか? 今回はこのようなことについて知りたいという方々のために必要となる知識についてご紹介していきたいと思います。

1、相続登記(相続における不動産の名義変更)とは

相続によって土地や建物などの不動産を取得した場合に、その不動産の所在地を管轄する法務局等に申請して、被相続人からその不動産を取得した相続人に名義を変更する手続きのことを言います。なお相続税の申告の場合とは異なり、相続登記にはいつまでに手続きをしなければならないという義務や期限について明確に定められているわけではなく、したがって罰則が適用されることもありません。そのため相続登記をしないで放置しているケースが多いのです。しかしながら、たとえば土地を所有していた父親が死亡した場合に、母親が土地を相続し、子は1人で2次相続のときは自動的に自分が相続することになるのでそのときに相続登記をしようというようなシンプルなケースであれば問題はないのかもしれませんが、相続登記をしていなければ、さまざまなトラブルになるリスクが伴いますので、やはりできる限り早く相続登記をしておくべきなのです。

2、相続登記が必要な理由および相続登記をしないときに生じる不都合

⑴その不動産に関する権利関係が複雑になります。

不動産の名義人が死亡した瞬間から、その不動産を相続によって取得する相続人が確定しその名義が書き換えられるまでの間は、事実上その不動産は相続人全員の共有財産になります。そしてその間に相続人のうち誰かが死亡した場合には、その不動産の共有持分権は、そのまま死亡した人の相続人に相続されます。具体的には下図のようになります。これによると不動産の名義人が死亡した時点では相続人は4人であったのですが、現時点では19人にまで膨れ上がっているのです。もしこの状態で特定の相続人名義に相続登記をするとすれば、この19人全員が不動産の共有持分権を持っていることになるため、遺言でその旨を明確に指定していない限り、全員が参加した遺産分割協議を行い、全員が同意して遺産分割協議書に署名捺印しなければならないのであって、1人でも同意しない人がいると相続登記をすることができません。子供だけならまだしも死亡した相続人の妻や孫まで含まれてくると、権利関係はさらに複雑になって収拾がつかないことになってしまう恐れがあります。相続登記をしていない期間が長ければ長いほど相続人が増えて不動産に関する権利関係が複雑になって同意を得るのが非常に難しくなりますので注意が必要です。

⑵認知症等の影響

相続人の誰かが認知症などになって判断能力が低下してしまうと、家庭裁判所を通して相続人の代わりに成年後見人を選任してもらわなければ遺産分割協議をすることができません。この場合遺産分割において利害関係のある人が後見人となったときには、別途特別代理人の選任が必要です。利害関係のない人が成年後見人にすることもできますが、遺産分割協議終了後に、その成年後見人を解任するには家庭裁判所の必要になります。さらに成年後見人選任には数ヶ月の時間と費用がかかるのです。このように手間と時間と費用がかかることを考えると相続登記はできる限り早めにしておくに越したことはないのです。

⑶相続人のなかに行方不明者がいる場合そのままでは相続登記をすることができません。

連絡先を調べる方法が連絡できない場合
まず行方不明者の住所を特定します。戸籍を辿っていくと行方不明者の現在の本籍地に辿り着き、本籍地の市区町村が発行する戸籍の附票で行方不明者の現在の住所を確認することができます。そして手紙を書いたり直接訪問したりして可能な限り連絡をして遺産分割の交渉を進めます。

生きているはずだが、住所がなく居所がつかめない場合
家庭裁判所に不在者財産管理人選任を申し立て、家庭裁判所の許可を得て不在者財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加することによって遺産分割することができます。申し立てが認められるまでに通常3~6ヶ月の期間がかかります。

7年以上②の状態が続いて生きているかどうかわからない場合
家庭裁判所に失踪宣告を申し立て。行方不明者が行方不明になったときから7年後に死亡したものとみなしてもらうこともできます。この場合においては、行方不明者に子供がいればその子供が相続人となり、今回の遺産分割協議に参加しなければ遺産を分割することはできません。ただし被相続人が死亡した後に、行方不明者が死亡したものとみなされた場合においては、代襲相続は発生しませんので注意が必要です。

⑷相続登記自体をすることができなくなることがあります。

市区町村役場は、死亡した人の住民票の附票は5年間、戸籍は50年間ないし80年間、保存することが義務付けられているのですが、これらの期限を過ぎると被相続人の書類を取得することができなくなってしまう可能性があり、したがって相続登記自体をすることができなくなってしまいます。現在はデータで保存されていますので、5年間の保存期間が過ぎたからといって直ちに住民票附票が消失することはありませんが、15年や20年となると取得することが難しくなります。

上記のように権利関係の複雑化・認知症等判断能力の低下・相続人の行方不明などの状況のもとでは、それらを解決することができなければ遺産分割協議をすることができませんので、特定の相続人の名義に相続登記をすることができません。相続登記をしないで放置している期間が長いほど、このような状況となる可能性が高くなりますので、相続登記をすることができなくなる可能性も高くなります。

対象不動産の売却や担保提供等ができません。
対象となる不動産を売却したり、銀行等金融機関から融資を受けるために抵当権等の担保に入れたりする場合においては、相続登記を完了していなければ行うことができません。ただし不動産の名義人である被相続人が生前に売買契約を締結していて所有権移転登記をする前に死亡した場合においては相続登記をする必要はなく、相続人が名義人である被相続人から直接買主にその不動産の所有権移転登記をすることができます。

対象不動産が差し押さえられる可能性があります。
ある相続人に借金があって返済が滞っている場合において、債権者が確定判決などの債務名義に基づいて相続財産を差し押さえることがあります。この場合には債権者は相続人の法定相続分を差し押さえることができますので、債権者は単独で債務者の法定相続分の相続登記をした上で、債務者である相続人の共有持分について差押登記することができます。すなわち誰も知らない第三者が相続人としてその不動産の共有持分を取得するになり、 もし売却されてしまった場合においては、その不動産の買主との共有名義になってしまうのです。

不動産賠償を受けることができません。
不動産賠償とは、事故や契約違反、不法行為などにより不動産が受けた損害を金銭などで補填することを言います。不動産賠償は本来実際に住んでいる人に対して。行うものですが、対象者すべてのそれを特定することが難しいため、原則として登記上の名義人に対して行われます。したがってたとえば自分が住んでいる家の名義が死亡した父親のままであると、不動産賠償は原則として受けることができないのです。最近では、東日本大震災で原発事故により自宅に住めなくなった人に対して東京電力が不動産賠償を行おうとしましたが、相続登記されていないがために賠償が行えない、というケースも報告されています。

3、相続登記の流れ

◎相続登記次のような流れで行います。
⑴相続人の確定
亡くなった方(被相続人)の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取って、相続人が誰であるかを確かめます。戸籍謄本は郵送でも取得できますので、遠方へは郵送で申請します。
本籍地が転々としている場合は順番に戸籍を追いかけて行くので、戸籍を集めるのに日数がかかることもあります。

⑵相続財産の調査
亡くなった方(被相続人)の所有していた不動産の所在を調査します。私道部分が抜けてしまうのを防ぐため、名寄帳などを調べます。

⑶相続人の全員参加による遺産分割協議で遺産の分け方を決めます。
相続人の間で、どの財産を誰が相続するか決めてもらいます。相続人全員が合意するのであれば、どうの様な分け方でもかまいません。一人が全部相続したり、ある財産はAさん、ある財産はBさんという分け方でも大丈夫です。相続財産を共有で取得することもできます。

⑷遺産分割協議書に署名捺印
財産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員が署名捺印(実印)をし、印鑑証明書を添付します。

⑸相続登記の申請
戸籍謄本や遺産分割協議書が整ったら、相続登記を申請します。法務局(登記所)に相続登記の申請を出してから1~2週間で登記が完了します。登記が完了すると、登記識別情報(昔の権利証の代わりとなるもの)が法務局より交付されます。登記識別情報は、不動産を売ったり、贈与したり、担保に入れるときなどに使いますので。登記識別情報は、大切に保管しておいてください。

4、相続登記に必要となる書類や費用のまとめ

⑴相続登記に必要な書類
●登記申請書(法務局HPもしくは下記からダウンロードが可能です)
相続登記は法務局に申請を出しますが、前述の3パターンのケースによって使用する書式が異なりますので注意しましょう。

●相続登記の対象となる不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
法務局(登記所)で取得します。全国どこの法務局でも取得できますが、所在地等の対象不動産の基本情報が必要となります。不動産の地番情報があれば誰でも取得できるものです。家の引き出しに保管しているという人も多いでしょう。

●被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)
被相続人が亡くなった後に住民票から除外されたものです。相続人であれば故人の最終住所の市区町村役場で取得できます。

●被相続人(亡くなられた方)の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式
被相続人の法定相続人を確定するために必要な書類です。被相続人の最終本籍地の市区町村役場で(改製)原戸籍謄本及び除籍謄本を取得し、本籍地の移転が過去にあれば該当地の市区町村役場に遡りながら(改製)原戸籍謄本を取得していきます。出生まで遡る必要があります。
被相続人が本籍地異動を複数回行っている場合には取得手続きが大変になりますが、必ず必要な書類となります。司法書士等の士業専門家に取得代行を依頼することも可能です。

●相続人全員の現在の戸籍謄本
相続人の本籍地を管轄する市区町村役場で取得します。相続人自身のものですので取得は難しくありません。また被相続人のように出生時まで遡る必要はなく、最終本籍地の戸籍謄本のみで問題ありません。

●遺産分割協議書もしくは遺言
遺産分割協議書は相続人全員の遺産分割協議の結果、作成される書類です。相続人が1人だけのケースと遺言を用いて相続登記をする以外は必要となります。

相続人全員が実印で押印のうえで印鑑証明書を添付する必要があります。
遺産分割によらず、遺言によって相続登記を行う際には遺言を法務局へ提出します。

●相続人全員の印鑑証明書
相続人が遺産分割協議書に押印した実印を証明する印鑑証明書が必要です。相続人が各自市区町村役場で取得します。なお法定相続分どおりの登記の場合や相続人が1名の場合には印鑑証明書は不要です。

●物件を取得する相続人の住民票
対象不動産を相続する相続人のみ住民票が必要となります。

●対象物件の固定資産評価証明書
不動産が存在する市区町村役所で取得します。

⑵相続登記に必要な費用

相続登記を司法書士事務所などにご依頼した場合の費用例です。どこの事務所も必ずしもこの金額でやっているとは限りません。
ⅰ司法書士の報酬 4-8万円程度のの定額報酬もしくは総額の何%等
ⅱ登録免許税 固定資産評価額の0.4%
ⅲ実費 戸籍 1通 450円程度
Ⅳ除籍・原戸籍 1通 750円程度
Ⅴ住民票 1通 300円程度
Ⅵ登記事項証明書 1通 500円程度

このうち、「ⅱ登録免許税」は、たとえば、土地建物の固定資産評価額の合計が2,000万円程度であったとすると、8万円(固定資産評価額の0.4%)となります。固定資産評価額というのは、毎年5月ごろに送られてくる、納税通知書で確認することができます。
「ⅲ戸籍等取得費などの実費」は、たとえば、戸籍が5通、住民票が2通、登記事項証明書が2通であったとすると、5,000円ぐらいで、それほど高額にはなりません。
このように、相続登記にかかる費用は、司法書士報酬と登録免許税が大半を占めます。

5、土地を相続したときの相続税

相続した財産には相続税がかかります。土地を相続した場合も、相続税を納める義務があります。しかし、「5,000万円の土地を相続したから、この土地の相続税は○○円」というように、土地の価格だけをもとに相続税の額を求めることはできません。なぜなら、相続税は土地以外の財産をすべて含めた遺産総額をもとに計算するからです。

⑴産総額を計算する
土地の価格だけがわかっても相続税の額は計算できません。相続税を計算するためには、まず、土地以外の財産を含めた遺産総額を計算します。

①土地の価格を計算する
相続税を計算するときは、財産の価格は時価ではなく、「相続税評価額」という相続税を計算するための価格を使用します。
土地の相続税評価額は、固定資産税評価明細書に記載されている価格を1.14倍することで、おおよその額が求められます。
②土地以外の財産を含めた遺産総額を計算する。
土地以外の財産についても、相続税評価額を求めます。現金や預金は、残高がそのまま相続税評価額になると考えて差し支えありません。また、死亡後に支払われる死亡保険金も遺産総額に含めます。建物は、固定資産税評価明細書に記載されている価格が相続税評価額となります。株式、ゴルフ会員権、骨とう品などは価値の判断が難しいため、もしそのような財産があれば、相続税の申告に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
これらの土地以外の財産と土地の相続税評価額を合計すれば、相続税を計算する上での遺産総額が求められます。

⑵相続税に「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除がある
相続税を計算する上での遺産総額が計算できれば、次は、相続税がかかるかどうかを確認します。相続税には基礎控除があり、遺産総額から基礎控除額を差し引いた部分が課税の対象となります。つまり、遺産総額が基礎控除額より少なければ相続税はかけられません。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数(※)
(※)相続放棄した法定相続人も数に含めます。法定相続人の数に含めることができる養子(普通養子)は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。

⑶相続税の申告と納税
遺産総額が基礎控除額を超えて相続税がかけられることがわかれば、できるだけ早く相続税の申告と納税の準備をしましょう。
相続税の申告と納税の期限は、相続登記と異なり、通常は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。
相続税には、さまざまな特例や税額の控除があり、結果として相続税を払わなくて良くなる場合もあります。特例を適用できることを知らずに、納めなくても良い税金を払ったり、逆に特例が適用できないのに特例を適用した税額で申告して、追加で税金を払ったりすることもあります。相続税の計算を間違えて税金を払い過ぎたのであれば、返してもらうことができます。一方、税金が不足していたのであれば、不足分を支払った上に過少申告加算税がかけられるため、余計な負担が生じます。こうした危険性を避けるため、土地を相続した場合は、相続に精通した税理士に相続税の申告を依頼することをおすすめします。

⑷納税資金は早めに用意を
相続税の納税は原則として現金で一括納付します。相続した財産が不動産など現物だけというような場合は、納税のための資金を用意しなければなりません。
納税期限までに納税資金が用意できなければ、場合によってはせっかく相続した財産を処分することにもなります。相続税には延納や物納といった制度がありますが、適用するにはさまざまな制約があります。

納税資金の準備には早目にとりかかるようにしましょう。