遺産分割協議とはなにかについて知りたい、遺産分割協議の流れや手続方法について知りたい、遺産分割協議を円滑に進めるための方法について知りたい、遺産分割協議書の作成方法について知りたい、・・・今回はこのようなことに関して必要な知識をご紹介していきたいと思います。

遺産分割協議とは?

誰がどのような割合で遺産を引き継ぐのか、遺産の分け方について、遺言による指定がある場合には、これにしたがって分けることが多いでしょう。また、遺言がない場合には、民法に相続分の割合が規定されていますので、その割合で遺産を分けるということになります。
しかし、相続人全員で合意すれば、遺言の内容や法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることができます。このように、相続人全員で遺産の分け方についての話し合いをすることを、「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は、相続人全員が合意しなければ無効です。行方不明の相続人を除外して行なったり、いわゆる隠し子が存在することを知らずにその子を含めずに行なった遺産分割協議も無効となります。
遺産を各相続人に平等に分けるということは不可能である場合もあります。遺産が不動産と少額の預金のみというような場合には、平等に分けることは不可能でしょう。こんな場合には、話し合いがなかなかまとまらないということも考えられます。
そして、遺産分割の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所での調停や審判の手続きによる必要があります(裁判所のHP|遺産分割調停)。遺産分割調停というのは、家庭裁判所での遺産分割の話し合いです。調停委員が各相続人の間に入って意見を聞いたり、家事審判官(裁判官)から具体的な解決策が提案されたりしながら、話し合いが進められます。調停が不成立となった場合には、当然に審判手続きに移行し、裁判所が分割方法を決定することになります。
このような家庭裁判所の手続きに関しては、弁護士しか代理することができません。
司法書士は、簡易裁判所における代理権があっても、家庭裁判所の手続きについては代理権がないため、家事手続きの代理はできまぜん。

遺産分割協議は、いつまでにやらなければいけないというような期限はありません。しかし、相続税に関しては、協議が確定していなければ受けることのできない軽減措置があります。相続税の申告期限内(相続開始後10ヶ月内)に協議が整わないと、このような相続税の軽減措置については、受けられなくなる場合があります。
たとえば、配偶者が相続人となる場合には、配偶者控除という控除が受けられますが、相続税の申告期限までに遺産分割が終わっておらず、配偶者に分割されていない財産については、配偶者控除を受けることができません。
しかし、相続税は基礎控除の割合が大きく、ほとんどの人には、相続税はかかりません。相続税がかからない場合には、相続税の申告期限までに協議を終わらせる必要はないということになります。

遺産分割協議の手続きと流れ

被相続人が遺言により遺産の分け方を指定していれば、それにしたがうのが原則です。遺言書がなく、相続人が2名以上いるときには、相続人全員の話し合いにより遺産の分割方法を決定します。これが、遺産分割協議です。
それぞれの相続人は、遺産に対して法定相続分に応じた権利を持ちますが、遺産分割協議においては法定相続分にこだわる必要はなく、相続人全員が合意するならばどのように遺産を分けても差し支えありません。
法定相続分を修正するものとして、寄与分と特別受益の制度があります。被相続人へ生前特別に貢献した寄与分や生前贈与などで受けた特別受益が認められたとすれば、各相続人の相続分が変わってくることになります。また、協議による遺産分割がおこなえないときには、家庭裁判所へ遺産分割調停(または、審判)の申立をすることができます。

相続人の範囲の確定

遺産分割協議は相続人の全員によりおこなう必要があります。たとえば、被相続人が再婚していて、前妻(前夫)との間に子がいればその子も相続人ですし、また、婚外子であっても認知していれば相続人となります。そこで、被相続人の子の全員を明らかにするため、被相続人が生まれてから死亡に至るまでの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を取得する必要があります。その他にも、代襲相続が生じている場合、兄弟姉妹が相続人になる場合などでは、非常に多くの戸籍謄本などを取得しなければならないこともあります。司法書士に不動産の相続登記や、家庭裁判所での手続を依頼すれば、必要な戸籍謄本などの取得についても全てまかせることができます。
また、住所や連絡先が分からなかったり、行方不明になっている相続人がいる場合であっても、その相続人を除外して遺産分割協議をすることはできません。司法書士に依頼して、現住所(住民票に記載されている住所)を調査したうえで、失踪宣告や不在者財産管理制度の利用を検討することもあります。

法定相続分の確認

相続人が2名以上いる場合の、各相続人の法定相続分は、民法により定められています。
まず、相続人が配偶者のみであるときは、配偶者が相続財産のすべてを取得します。子(または、直系尊属、兄弟姉妹)のみが相続人である場合も同様です。

配偶者、および子(または、直系尊属、兄弟姉妹)がともに相続人になるときの相続分は次のとおりです。

法定相続人→法定相続分
配偶者および子→配偶者、子が2分の1ずつ
配偶者および直系尊属→配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1
配偶者および兄弟姉妹→配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合、被相続人と父母のいずれかが異なる兄弟姉妹(半血兄弟)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の半分とされています。
子や兄弟姉妹の代襲者が相続人である場合、代襲相続人は被代襲者の相続分を引き継ぎます。たとえば、被代襲者(相続分は2分の1)の、2人の子たちが代襲相続人であったならば、それぞれの相続分は遺産全体の4分の1ずつとなります。

遺産の内容(範囲・評価額)の確定

遺産分割の対象となる遺産とは、相続開始時に存在し、かつ、分割時にも存在する、未分割の遺産です。具体的に対象となるのは次のようなものです。遺産分割のための相続財産評価は、実務では分割の時を標準とするとされています。

不動産
不動産の賃借権
預貯金
現金
株式、国債、社債、投資信託など
著作権、特許権、商標権など
動産(貴金属、着物、家財道具など)

上記のうち、預貯金は可分債権ですから、相続の開始とともに当然に分割されて法定相続分に応じて各相続人に帰属するので、遺産分割協議は不要だとも考えられます。ただし、銀行などの金融機関で預金の払い戻しを受けるには、遺産分割協議書(または、銀行所定の様式による届出書など)の提出を求められ、実際にも遺産分割協議の対象とするのが通常でしょう。

金銭債務(借金、保証債務など)は、遺産分割の対象とはなりません。債務は各相続人へその法定相続分にしたがって引き継がれるものだからです。ただし、相続人間で誰が債務を負担するかを決めて、それを遺産分割協議書に記載することは可能ですが、それによって他の相続人が債務から逃れることはできません。

特別受益・寄与分

各相続人の法定相続分を修正するものとして、寄与分、特別受益があります。

寄与分

寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加について、特別の貢献をした人に対し、本来の法定相続分を超える相続分を与えようとするものです。
寄与分が認められるのは、『被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付』、『被相続人の療養看護』、その他の方法により、『被相続人の財産の維持または増加』について特別の寄与をした場合に限られるとされています。

特別受益

特別受益とは、被相続人から、『遺贈、婚姻や養子縁組のための生前贈与、生計の資本としての生前贈与』を受けたことをいいます(特別受益と持ち戻しとは)。
特別受益があった場合、「相続財産に特別受益に該当する贈与の価額を加算したもの」を相続財産とみなします。そして、特別受益を受けた相続人の相続分からは、その贈与の価額分を差し引きます。
したがって、特別受益の額が多い場合、相続が開始した後には、受けるべき相続分がないということもあります。

具体的な相続分、取得分額、および遺産分割方法の決定

特別受益、寄与分がある場合には、それを反映させることで各相続人の具体的な相続分を算出します。そして、遺産分割時における遺産の評価額により各人の取得分額を確定させます。
各相続人の取得分額が確定したら、どのように遺産を分割するかを決定します。遺産分割の方法としては、遺産そのものを分割する現物分割の他、代償分割、換価分割、共有分割があります。
代償分割では、相続人の一部がその相続分を超える財産を取得する代わりに、他の相続人に対し債務を負担させます。たとえば、相続人中の誰かが不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金の支払いをするといった具合です。
換価分割では、相続財産を売却処分してその価額を分配します。共有分割とは、遺産そのものを相続人の相続分に応じて共有取得することをいいます。

上記のうち、最初に検討すべきは現物分割です。それが難しい場合には代償分割を検討し、代償分割もできない場合に換価分割を検討します。遺産を共有のまま取得する共有分割は最後の手段だといえます。
ただし、相続人の全員が合意するならば、どの遺産分割方法を採るかは自由であり、現物分割が可能な場合であっても不動産を共有取得することも可能です。

遺産の分割の方法および選択基準

遺産分割協議書の作成方法

相続人による、遺産分割についての話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、とくに決められた形式はありませんが、不備があると相続財産の名義変更などの手続きがおこなえないこともありますから注意が必要です。
不動産の名義変更(相続登記)をする際には、遺産分割協議書が必要添付書類となります。司法書士に相続登記を依頼した場合、遺産分割協議書の作成も司法書士がおこなうのが通常です。
遺産分割協議書へは、相続人全員が署名し実印で押印します。ただし、未成年者のための特別代理人、または、成年後見人が選任されているときには、その特別代理人、後見人が署名押印することになります。この場合、家庭裁判所で特別代理人の選任をしてもらう必要があります。

遺産分割協議を円滑に進める方法

遺産分割協議をする上での根本的な問題


「話し合いをする時間や場所がない」この一言に尽きます。
現代の生活では核家族化が進み、家族内でも遠方住まいのケースや、職場勤めで時間的都合がつけられず、日程調整など大変です。日程が決まったとしても果たしてその1回だけで全て話がまとまるものでもありません。ですので、そういった事前の予知による下準備も重要になってきます。
遺産分割協議に慣れている方でも手間が掛かりますので、はじめて参加する方、進行する方などは大変かも知れません。お互いが貴重な時間と労力をかけて協議するわけですから、お互いの歩み寄りも必要になってきます。

遺産分割協議を円滑に進めるための注意点

全相続人をしっかりと調べること

相続人を確定させることは遺産分割協議を行ううえでの大前提となる部分です。後から、実は○○も相続人だった・・・となると遺産分割は無効となります。(民法909条) 遺産分割が無効となれば、再度の遺産分割協議が必要になってくる為、このポイントは必ず押さえておかなければなりません。後々の紛争の火種にもなりかねます。

故人が残した遺産を確定させること

分割する遺産の内容を確認します。現金や不動産などプラスの財産だけではなく、借金などマイナスの財産もすべて洗い出します。また、相続財産目録を作成するとよりスムーズに進行が出来る為、協議が円滑に進みます。

「誰が」「どの遺産」を取得するのかを明確にする

遺産分割協議書を作成する際に、不特定なことがあると相続登記が出来なくなる場合があります。不備の無いように以下のように作成しましょう。 「誰が」
氏名を特定しますのでさほど問題にはなりません。
「どの遺産」
不動産:登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている情報
土地:所在、地番、地目、地積。建物の場合は、所在、地番、種類、構造、床面積
預金:金融機関、支店名、口座番号
株式等の有価証券:銘柄等で特定
自動車:登録番号、車名、形式、車台番号等(車検証に記載されている情報)
宝石や貴金属:品名、製造者、型番、素材、サイズ、色等

借金については相続人全員の負担であること

借金などの債務は遺産分割の対象にならず、それぞれの法定相続分にしたがって、相続人が負担することになります。よって、協議の際にはしっかりその旨を周知すると良いでしょう。
相続人の間で債務の割合を決めることは可能ですが、第三者(貸主)には主張が出来ない点においては注意が必要です。協議内で定めた相続人間の負担割合は相続人の間だけで有効となります。

遺産分割後に新たに相続財産が発見された場合による対処方法の記載

遺産分割協議時に判明していなかった遺産が、分割後になって発見されるケースがあります。その際にどうするのかをあらかじめ決めておけば、後日の紛争を回避する事ができます。具体的には、「本協議書に記載のない遺産及び後日遺産が発見された場合は、当該遺産について相続人間で改めて協議し、分割を行うものとする。」と記載します。(もしくは、特定の相続人に相続させる旨を記載しても構いません。)

相続人全員の署名・押印

署名(直筆)ではなく記名(ワープロ打ちなど)でも無効とはなりませんが、署名の方が良いでしょう。また押印は、実印を使います。とくに不動産の名義変更、銀行の口座の引継ぎ手続では、実印でないと手続ができないことがあります。

専門家に依頼することも視野に

相続人だけで協議を進めようとしている方にも、相続のプロに一任するということは視野に入れておいても良いかも知れません。第三者の専門家を挟むことによって、互いの意見を取り交わしし易くなるほか、後の紛争防止の意味合いでもその効果は大きいものです。時間的にも余裕が出来ますし、不備がなくスムーズな協議を行えるでしょう。

それでも遺産分割協議がまとまらない場合

人それぞれ価値観や考え方が違うこともあり、上記のポイントを踏まえたうえで話し合ったとしても遺産分割協議が難航する場合があります。そんなときは裁判所に遺産分割調停を申し立てることも視野に入れなければならないでしょう。

協議成立後の注意点

遺産分割協議の成立後は、原則として再度の遺産分割協議は出来ません。一度決まった相続財産の内容をいつでも変えられてしまうとなると、法的な安定性に欠ける為です。 ただし、無効、取り消しの原因となる正当な理由があれば、一部または全部をやり直すことができます。

最後に

遺産分割協議というのは「人」と「人」とで行うものです。 法定相続分だからきっちり法律に従って財産を分けよう、など頑なな感情を持たずに、「完璧な平等はありえない」と相続人全員が知ったうえで、相続人それぞれの実情に合わせて柔軟に話し合って決めることが大切です。